プロが選んだ本物の音楽をお届けしたいと起業

プロの声楽家が、演奏家のためのマネジメント会社を設立

結婚式や披露宴、企業イベントなどにおいて、歌やピアノ、ヴァイオリンなどの生演奏を行う演奏者の提供事業に取り組む株式会社アートインターナショナルオフィス。代表取締役の榎本輝明氏は大阪音楽大学を首席卒業、国内主要コンクールで優勝経験などの経歴を持つプロの声楽家だ。
「以前から起業や会社経営に興味がありました。我々のような演奏家の多くは、芸能事務所や司会者派遣事務所などに所属し、音楽をまったく知らない人にマネジメントされています。演奏者の立場や気持ちを理解した人がマネジメントすれば、演奏者にもお客さまにもさらなるメリットが提供できると考えていました」

また、結婚式に対する意識の変化なども、起業の構想を後押しした。
「お客さまが『本物志向』と『安ければ何でも良い』という方向に二極化しつつあると感じていました。プロの演奏家である私が、プロの目で選んだ『本物の演奏家』をご提供できれば、お客さまのニーズに応えられると思ったんです」

プロの声楽家が経営することで、普通のマネジメント事務所との差別化ができると考えたのだ。
「起業する前に、演奏家として本場の声楽を学ぶために2年間イタリアに音楽留学し、帰国後はマネジメントを学ぶべく音楽マネジメント会社に就職し、マネジメント業務について働きながら学びました」現場でマネジメントを学んだ榎本氏は、その後株式会社アートインターナショナルオフィスを設立した。

「ありがとう」の気持ちは必ず言葉で伝える

起業をサポートしたのは、高校時代からの友人に紹介してもらったFirstStepだった。
「FirstStepのスタッフの方の説明がとても分かりやすかった。そして『税理士＝年寄りで偉そうな税理士』というイメージとは真逆の、若くて話しやすくて元気な人が多くてびっくりしたんです。それで、FirstStepにお願いしようと即決しました」

ゼロからホテルや結婚式場を新規開拓し、ビジネスを広げてきた榎本氏。ビジネスに取り組む上で大切にしていることをたずねると『感謝の気持ち』という答えが返ってきた。
「相手への感謝の気持ちを失うことは、信用を失うことと同じ。お客さまにも演奏家にも『感謝する気持ち』を持ち続けることを常に意識しています。あと、『ありがとう』の気持ちは必ず言葉にして伝えるようにしていますね」

さらに、自身がプレイングマネージャーになるような機会が生まれないように注意している。
「プレイングマネージャーとして、演奏とマネジメントを一つの現場で同時にやっている方もいますが、私には無理。一つの現場で二つを同時にやろうとすると、演奏に集中した瞬間、マネジメントの目が行き届かなくなります。演奏とマネジメント、どちらも同時並行でできるほど簡単な仕事ではありません。私が演奏する時はマネジメントから離れ、演奏家に集中します」

起業に必要なのは、不撓不屈の精神

経営者として奮闘する榎本氏に、これから起業する人へのアドバイスをお願いした。
「不撓不屈の精神しかありません（笑）。倒されるのは当たり前で、倒されても立ち上がる気持ち、そしてやると決めたら成功するまで取り組む粘り強さが必要です。失敗なんて当たり前ですし、あとで後悔するのも当たり前。それでも自分の想いや信じたことを貫き通すことが大事だと思います。だって、そうしたくて起業したんですから（笑）」

最後に今後の展開について話をうかがった。
「演奏家時代から、一番という順位にこだわってきました。会社設立して10周年となる時に、関西で一番のマネジメント事務所になっていることを目指します」

さらに、新しい事業への挑戦も始めており、『Your Wedding』というサービスを新たに開始した。これは、最近増加している結婚式を挙げない人に、格安で結婚式場を利用してもらうサービスだ。
「結婚式を挙げない人に、結婚式というセレモニーを行ってもらいたい。セレモニーとしての結婚式は、離婚率の上昇に歯止めを掛けたり、夫婦の絆がより強くなる効果があると考えています。また、結婚式場も空いたスペースを有効活用するメリットがあり、Win-Winの関係が構築できるサービスだと思っています。この事業を社会貢献の一環と考え、たくさんの人に利用していただけるよう広めていきたいですね」