今年もあと1ヶ月をきりました。
この時期になると会社から「扶養控除申告書」と「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」が会社から配られます。年末調整を行う必要があるためです。

給与の支払者には、所得税法190条において、「給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者でその年中に2,000万以下である方」については年末調整しないといけないと決められているためです。

お客様やそのスタッフの方からよく、

「扶養に入れる範囲内で働くには年収はいくらまでにすればいいですか?」

とご質問を頂きます。扶養といっても各制度によって扶養になる金額が違います。
今回は各制度の扶養に入るための要件などについてご説明いたします。

 

 < 目 次 >

 ・扶養控除ってなに?

 ・扶養控除の対象は?

 ・103万円以下ならいいんじゃないの?

 ・103万円を超えると扶養に入れないの?

 ・気を付けなければならない130万円とは

 ・扶養控除Q&A

 

 

扶養控除ってなに?

納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを扶養控除といいます。
つまり、「養っている家族が多い場合にはお金もたくさん必要なので、税金は減らしてあげましょう!」と言う制度です。

 

扶養控除の対象は?

控除対象の扶養親族は、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の次の四つの要件をすべて満たす方たちです。

  1. 配偶者以外の親族※1
  2. 納税者と生計を一にしている※2
  3. 年間の合計所得金額が38万円以下であること※3
  4. 青色事業専従者として給与を受けていない又は磯色事業専従者でないこと

※1 6親等以内の血族及び3親等以内の姻族
   また、都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人も含みます。

※2 同居が要件ではなく、仕事や学校、療養などの都合上別居してても、生活費や学資金等送金してれば生計を一にするものとして取り扱われます。

※3 給与のみの場合は年間103万円以下になります。

103万円以下ならいいんじゃないの?

パートやアルバイトを始める時に、
「年収が103万円を超えると損だから、103万円以内で働いた方が得だよ!」
というお話を聞いた事がある方も多いと思います。

パートやアルバイトの方で、旦那さんがおられたり、ご両親と同居している方も多いと思います。
その場合条件を満たせば、旦那さんもしくはご両親の所得税の計算上、配偶者控除や扶養控除を受けることができます。

その条件が、
「所得者と生計を一にする配偶者または親族で、合計所得金額が38万円以下」なのです。

合計所得が38万円以下とはどういったことでしょうか。

パートやアルバイトで得る収入は、給与収入になります。
給与所得は、

「給与所得=給与-給与所得控除」

で、計算します。
所得金額が38万円以下というのはこの「給与所得」が38万円以下になることをさします。

この給与所得から所得控除を控除した課税所得の金額に税率を掛けて所得税が課税されます。
所得控除の項目のひとつとして基礎控除というものがあります。
基礎控除38万円とは、所得のある人全てが対象になっている所得控除です。
なので、「給与の総収入金額-給与所得控除=38万円以下」だと所得税がかかりません、課税所得が0になるからですね。

給与所得控除は、給与等の総収入金額によって違いますが、給与収入が180万円以下の場合は、給与収入×40%。
ただし、65万円未満のときは65万が控除額になります。

「基礎控除38万円+給与所得控除65万円=103万円」

これが世間でよく言われる103万円です!

 

103万円を超えると扶養に入れないのか!?

配偶者がいる場合には一定の要件を満たすと「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けることができます。

配偶者控除とは、以下の4つ全ての要件に当てはまる方です。

  1. 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
  2. 納税者と生計を一にしていること。
  3. 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

給与収入が年間103万円を超えたので配偶者控除を受けられない方でも

以下の5つ全ての要件を満たせば、「配偶者特別控除」を受けることができるのです。

  1. 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
  2. 納税者と生計を一にしていること。
  3. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じ一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
  4. ほかの人の扶養親族となっていないこと。
  5. 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること

また、配偶者特別控除を受けようとする所得者の合計所得が1,000万円を超える場合には、受けることが出来ません。
※給与所得だけの場合、本年中の給与の収入金額が12,315,790円を超えるときは、 合計所得金額が1,000万円を超えることとなります。

配偶者特別控除は、年収が103万円を超えてしまっても、合計所得金額が76万円未満であれば、控除が受けられます。

控除額は、次のようなっています。

配偶者特別控除

このように、年収が141万円未満までは、配偶者特別控除を受けることができます。
年収が103万円を超えても、141万円までは、段階ごとに控除を受けることができるのです。

 

気を付けなければならない130万円とは

所得税とは、別に社会保険の扶養にも要件があります。
被扶養者に該当する条件は、被保険者により主として生計を維持されていること、及び次のいずれにも該当した場合です。

  1. 収入要件 年間収入130万円未満
    (60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ 
    同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(*) 
    別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満 
     ※年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。
    (給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。)  
    また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれますので、ご注意願います。
    (*)収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上の場合であっても、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。
  2. 同一世帯の条件 配偶者、直系尊属、子、孫、弟妹以外の3親等内の親族は同一世帯でなければなりません。

年収130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、社会保険料を自己負担しなくてはなりません。

ただし、年収が130万円以下の場合でも

  1. 1日又は1週間の労働時間が正社員の概ね3/4以上
  2. 1ヶ月の労働日数が正社員の概ね3/4以上

の場合は、パートタイマーであっても被保険者になります。
社会保険は、報酬月額が63,000円未満の場合でも、健康保険2,917円(40際以上の場合は、3,366円)+厚生年金8,388円(一般)=合計で、11,462円の自己負担になります。(大阪府の場合)
所得税よりも、個人負担の金額が大きいので注意が必要です。
※保険料は平成25年11月21日時点のものになります。

 表

 

扶養控除Q&A

Q.年の途中で扶養控除対象者が死亡した時、年末調整で扶養控除を受けることはできますか。
A.扶養控除や控除対象配偶者に該当するか否かは、その年の12月31日の現状によって判断します。
  年の途中で扶養親族が死亡した場合は、扶養控除対象になります。
  また、年の最初では扶養親族に該当していなかった場合でも、
  死亡時の事由によってその年の合計所得金額が38万円以下の場合は、 扶養控除対象になります。

Q.別居している両親を扶養控除にいれることはできますか。
A.別居している両親を扶養控除の対象にするためには、
  常に生活費等の送金を行われ「生計を一」にしている必要があります。
  常に仕送り等を行っていれば、扶養控除対象になります。
  兄弟それぞれが両親に仕送りしている場合は、
    どちらか1人だけが両親を扶養親族として申告することができます。
  兄弟の両方が両親を扶養親族にはできないので、注意してください。

 

扶養控除には、大きく分けて103万円・130万円・141万円の3つの壁があります。
扶養控除内で働くときには、この3つの壁に注意して下さい。

また、「扶養控除申告書」と「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」の書き方は、
「年末調整の4つのポイント!動画付でわかりやすく解説してみた」をご覧下さい。

平成26年度の年末調整の説明についてはコチラをクリックしてご覧ください。