こんにちわ! 今回の記事はFirststepの中谷が担当させていただきます。

起業するといやでもついてまわる決算書。経営者は数字と向き合い、それを経営につなげていくことが起業を成功に導く要素の1つだと思います。

そこで、今回知っててほしいことは決算書に関するこちらの3つです!!

決算書

◇ 変動損益計算図で会社の未来を知れ!

◇ 決算書は誰かのためじゃなく自分の為に作るものと知れ!

◇ 決算書(貸借対照表)で会社の資金の運用と調達を知れ!

※3つと書きながらそこそこ長文になってしまいました・・・お時間ある際にお読みいただけると嬉しいです!(5分程度必要です)

 

変動損益計算図で会社の未来を知れ!

 

損益計算書は、売上やその原価、他にも経費が表れているので、そのままで使おうと思っても使うことが出来ます。

しかし、損益計算書を見るだけでどれだけの売り上げを上げると会社にどれだけのお金が残るのか、どこからどれだけのお金を節約することで会社に残るお金を把握できるのかはわかりずらいですよね。

そこで、損益計算書を経営に役立つ形にカスタマイズをします!!

 PL custom

カスタマイズ後の損益計算書を変動損益計算図と呼びますが、こちらの損益計算図は損益計算書を横に倒しただけではないのがお分かりでしょうか。

 変動損益計算書を作成するためには、まず全ての費用を売上に伴って増えたり減ったりする費用である「変動費」かそうでない費用の「固定費」に分類します。

例)変動費:商品仕入高、外注費、材料費 など
固定費:役員報酬、給与、地代家賃、支払利息 など

損益計算書は販売費及び一般管理費と営業外費用が分かれていますが、損益計算図では固定費に含まれています。
損益計算書では本来の会社の事業でどの程度の利益が計上されているか把握する必要があるので、事業に伴い発生する費用かどうかを管理するために、販売費及び一般管理費と営業外費用を区分しています。

しかし、経営者は会社全体として一体どれだけの売上を出さなければ赤字になるのか、経営計画を成就させるためにだけの売上をださなければいけないかを認識しなければいけません。

そこで、損益計算図が重要になってきます。
先ほどの損益計算図に、大切な追加情報を加えていきましょう。

 PL custom1

追加した情報は、粗利率と税率の二つですね。
粗利率とは、売上に対する粗利の割合です。税率は、年間の利益が800万円以下であれば30%、それ以上であれば40%で試算しましょう。

 

 では、こちらも活用方法を見ていきましょう。

上図の損益計算図は
年間の売上が1,000万円、粗利率が70%、固定費(人件費や家賃等)で540万円の経営計画を立てています。
年間で借入を40万円返済することで、手元に56万円の資金を確保することができそうです。

 

しかし、経営者はもっと早く借入を完済したいと思っており、年間80万円の返済がしたいと考えました。その時にどれだけの売り上げを上げればいいか、損益計算図を使うことですぐに求めることが出来ます。その時には、先ほどの図を右から左に遡っていきます。

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では、実際に金額を入れていきましょう。

まずは、借入返済額が40万円増えますので、借入返済に+40万円します。
すると、税引き後利益で必要な金額も+40万円となります。

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税引き後で40万円増えなければいけないので、40万円÷(1-40%)と計算し、経常利益は約67万円の増額が必要になります。
固定費については、売り上げの金額と関係なく発生するものであるため変更がなく、粗利益も約67万円の増額が必要になります。

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粗利率が70%ですので67万円÷70%で売り上げの金額に割戻し、売上を約96万円を増やす必要があるという計算になります。

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このように、まず実際の自社の経営状況で指標を作成します。
この指標の作成時に特に重要になる事項がこちらです。

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粗利率、固定費、借入返済学、手元に残したい金額です!

粗利率と固定費がいくらかということがわかれば、どれだけの借入返済をしたいのか、手元にいくらの資金を残していきたいのかがわかるようになります。

『借入返済or手元残の増加額÷(1-税率)÷粗利率』という計算をすることで、最終の資金に対して不足する売上がわかります。他にも、固定費を増やすためには『固定費の増加額÷粗利率』という計算をすることで、固定費を増やす際に不足する売上もわかります。

以上の計算をすぐにできるようになると、「10年後に大型機械を購入したい」「返済計画では10年後に返済だけど、4年で返済したい」「役員報酬を月額100万円もらえるようにしたい」といった経営者が希望する会社に近づけるための目標が明らかになります。

しかし!!

損益計算図の粗利率と固定費については、市場の状況や従業員の増加などさまざまな要因で変化が生じてしまうものです。
その変化の都度、損益計算図を作り直す必要がありますが、変化していること、また変化している要因に気付くために、毎日の入力や毎月の会社の数字の把握が重要になります。

 

決算書は誰かのためじゃなく自分の為に作るものと知れ!

皆さんがよく目にする決算書は、一般に公正妥当と認められた企業会計基準に則り作成されているもので、日本の営利企業であればほとんどの企業が同様の形式で決算書を作成しています。
しかし、実際の企業活動は各社により異なっていて当然であり、経営者が自社の経営状況を把握するために押さえておかなければならない情報は各社により異なります。

それでは、誰のために決算書を作成しているのか、それは大企業であれば株主の為にもですが、中小企業であれば税務署への申告や銀行に提出するために統一した形式の決算書を作成しています。

「それやったら毎月数字の入力なんて、なんでせなあかんねん」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、決算書を異なる視点で見て、自分用にカスタマイズすることで、決算書の役割が劇的に変化します。

 

決算書(貸借対照表)で会社の資金の運用と調達を知れ!

「貸借対照表の借方は~、貸方は~」、「勘定科目の〇〇は△△を示しており~」といった内容の決算書の読み方の本がありますが、そんなことを知っても本質がわからなければ貸借対照表から必要な情報をピックアップすることはできません。

それでは、通常の貸借対照表を、経営者に必要な情報用にカスタマイズをしてしまいましょう!

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カスタマイズ前とカスタマイズ後の何が違うかというと、

資産 → 運用

負債 → 調達の借入

純資産 → 調達の儲け、とそれぞれ表現をしています。

ただの言葉遊びのように見えますが、貸借対照表の中身をイメージする際に、この言葉がとても重要になります。

 

例えば、会社を創業する際のイメージで考えてみましょう。
①まずは会社を設立する際に、資本金として100万円を振り込みます。

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②次に、30万円の商品をA商店から仕入れました。
その際に、商品代金は翌月に支払うこととしました。

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③その後、商品30万円を50万円でB商事に売り渡しました。こちらは商品代金を15日後に受け取ることとしました。

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④更なる販路開拓の為に、銀行から70万円を借り入れを行い、営業用車両を100万円で購入しました。

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以上の流れを、運用と調達で考えると、

①調達:会社が経営者からお金をもらってきたことになりますので、会社から見ると儲けとして調達をしています。
運用:現時点では、資金を使っていませんので、預金として運用しています。

 

②調達:本来であれば、お金を払って商品代金を支払わないと商品を買えないですが、A商店に支払いを待っていただく。つまり、お金を借りることで調達をしています。
運用:A商店から借りたお金を、商品にして運用しています。

 

③調達:仕入価格の30万円に利益20万円上乗せすることで、20万円の儲けを調達しています。
運用:買掛金の逆です。本来お金を払って商品代金を受け取らないと商品を売らないですが、B商事の支払いを待つ。つまり、お金を貸す形で運用をしています。

 

④調達:銀行から70万円を借入として調達しています。
運用:銀行から借りることで調達した資金70万円と経営者からもらった30万円を営業用車両として運用しています。

 

上記の例では出ていないですが、他にも代表的なものとしては、お給料の締日から支払日までに計上を行う未払金は従業員からお金を借りているのと同じ意味になります。
つまり、第三者から借りているの資金が負債、会社が自力で手に入れた資金が純資産、そしてそれらをどのように運用しているかというを表すものが資産ということです。

 

ではこのイメージを作ることで、どのように経営者にとって経営に役立つかを少しだけ説明しましょう。
例えば、決算書の読み方のHow to本で「自己資本比率は50%以上を保たないといけない」というのをよく見るかと思いますが、上述の運用と調達の考え方で言い換えてみましょう。

まず、自己資本比率の計算方法は「純資産÷負債・純資産合計額」です。
つまり、自己資本比率とは、調達手段のうち、儲けで調達している割合はいくらぐらいかということです。
先程の事例であれば、最終的に自己資本比率に直すと54%になりますが、 運用と調達で考えた場合、借入が100万円に対して、儲けが120万円となっています。
他に極端な例を出しますと、自己資本比率が10%の場合、 借入が4500万円に対して、儲けが500万円となっています。

 

上記2つの事業を比べてみると同じ資金を調達してきても収益力に大きな差がでてきます。
どちらの方が会社の調達のバランスが崩れてしまっているかわかりやすいでしょうか。

 

決算書を理解するために必要な3つのこと まとめ!!

いまから起業しようとしているみなさまは自分の考えている事業では、どんな経営計画になるのか、一度作っておいていただき、必要な売上を押さえておきましょう。また、実際に起業をされた際に経営計画と何がずれてしまっているのかをチェックする際にも損益計算図をご利用ください。

既に起業しているみなさまは自社の数字で損益計算図を作ってください。そして自分の理想としている会社の姿に近づけるためには、どこの数値を改善すればいいかを把握してください。
もしも目標売上を達成しているのに実際の利益が目標に達していないときは、そのズレの原因を解明していただくことで会社で発生している異常を発見することが出来ます。
また、自社の資金の運用と調達の現状を確認していただくことで、そのバランスを正すために、どの程度の売上が必要になるのかということも把握できるはずです!

 

以上です!!

会社の経営状況や決算書を理解するためにも損益計算図とカスタマイズ後の貸借対照表を駆使していただき、みなさまの経営判断に役立てていただきたいと思います。

中央会計