派遣の仕組みや許認可が変わる!労働者派遣法改正の影響を解説

2015/10/15

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平成27年9月30日に改正派遣法が施行されました。

内閣で決議までにさまざまな審議が重ねられてきましたが最終的に何が変わったのか、事業の運営にどのような影響があるのかをまとめて解説していきます。

  1. 派遣法改正の主な影響
    ・労働者派遣事業の許可制への一本化
    ・キャリアアップ措置の義務化
    ・雇用安定措置
    ・労働者派遣の期間制限の見直し
    ・派遣労働者と派遣先労働者の均衡待遇の推進
  2. 一般労働者派遣事業の許可基準が変わる
  3. 派遣元だけでなく派遣先も注意が必要
  4. まとめ

1. 派遣法改正の主な影響

派遣法が改正される内容も多岐に渡っています。

そこで事業を運営するにあたって大きく影響を与える主な影響をまとめてみましょう。

主な影響

  1. 特定労働者派遣事業制度を廃止し、一般労働者派遣事業のみに
    特定労働者派遣事業を実施していた事業者も、一般労働者派遣事業の許可を取る必要あり
  2. 労働者派遣事業の許可要件にキャリア形成支援制度を有することを追加
    労働局に要件を満たす教育訓練計画を提出する必要あり
  3. 派遣労働者の雇用安定を図る責務が発生
    継続就業見込みが1年以上など一定期間以上であり、継続就業を希望する有期雇用派遣労働者については、以下のいずれかを実施する責務が発生(※1)
    ①派遣先への直接雇用の依頼
    ②新たな派遣先の提供
    ③派遣元での無期雇用
    ④その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(※2)
  4. 労働者派遣の期間制限の変更
    事業所単位の期間制限だけでなく、個人単位の期間制限も設ける
  5. 派遣労働者と派遣先労働者の均衡待遇が強化
    ・派遣元は本人に賃金等の待遇の確保のために考慮した内容を説明する義務が発生
    ・派遣先は賃金水準の情報提供、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用に関して努力義務から、具体的な措置を行う配慮義務に引き上げ
    ・派遣元、派遣先ともに派遣料金の額の決定に際し、派遣労働者の賃金を同種の業務に従事している労働者の賃金水準と均衡を図る努力義務が発生

※1…①を実施した場合に、直接雇用されなかった場合は②~④を実施する
※2…例えば、次の派遣先が見つかるまでの有給の教育訓練、紹介予定派遣など

キャリア形成支援制度とは

既存の一般派遣事業者も新たに一般派遣事業者になる方もキャリア形成支援制度を設けて派遣労働者のキャリアアップ支援をすることが義務化されました。

以前は計画書の作成と事業報告書に簡便な記載で大丈夫でしたが、事業報告書に詳細な記述が必要になりますので、記録や管理方法の見直しが必要となる可能性がございます。
また、キャリア形成支援制度の中で教育訓練計画やキャリア相談窓口の設置の際に、社内外は問いませんがキャリア形成に関わる資格を保有する者やキャリアコンサルティングに関する一定の知見を有する者等の専門家を準備しなければいけなくなるので、今まで以上にコストがかかるおそれがあります。

事業報告のタイミングは6月30日とまだまだ先かもしれませんが、今から新しい事業報告の様式に合わせた情報がすぐに提示できるように情報の整理や内部管理体制の見直しをしていただく必要があるかもしれません。

 

2. 一般労働者派遣事業の許可基準が変わる

上述のとおり、今回の派遣法改正に当たり、特定労働者派遣事業を実施していた事業者も一般労働者派遣事業の許可を取る必要あります。

従来は届出を行うことで専門業務の「26業務」については期間の制限もなく労働者派遣を行うことができましたが、一般労働者派遣事業を行うためには一定の要件を満たす必要があります。
しかし、従来の一般労働者派遣事業の許可要件を満たす事業者のみに制限をすることは小規模派遣元事業主に対して大きな負担となる可能性がありますので、一部の許可の見直して暫定的な配慮措置を設けることとしています。

以下が新しい一般労働者派遣事業の許可の要件となります。

一般労働者派遣事業 許可要件

  • 専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと
  • 派遣労働者に係る雇用管理を定期性に行うに足りる能力を有するものとして次に掲げる基準に適合するものであること
    〇派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること
    〇教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後は3年間保存していること
    〇無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約の終了時に労働契約が存続している派遣労働者は、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと
    〇労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者については、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合は、労働基準法第26条に基づく手当を支払う旨の規定があること
    〇派遣労働者に対して、労働安全衛生法第59条に基づき実施が義務付けられている安全衛生教育の実施体制を整備していること
    〇雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行っており、都道府県労働局から指導され、それを是正していない者ではないこと
  • 個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること
  • 事業を明確に遂行するに足りる能力を有するものであること
    〇基準資産額が「2,000万円×事業所数」以上、現預金額が「1,500万円×事業所数」以上であること(※3)
  • 事業所の面積が概ね20㎡以上であること            等

※3…小規模派遣元事業主には暫定的な配慮措置が設けられています。

  • 常時雇用している派遣労働者数が10人以下である中小企業事業主
    ⇒当分の間、基準資産額:1,000万円、現預金額:800万円
  • 常時雇用している派遣労働者数が5人以下である中小企業事業主
    ⇒平成30年9月29日までの間、基準資産額:500万円、現預金額:400万円

暫定的な配慮措置が設けられているとはいえ、今回の改正は特に中小企業の特定派遣業を行っている会社には大きな影響を与えるものとなっております。
配慮措置の期間が経過するまでに、会社の財務状況を確認し、通常の一般労働者派遣業の許可要件を満たすことを意識した方がよいかもしれません。

(参考)基準資産額の計算方法

総資産 - 繰延資産 - 営業権(のれん) - 負債の総額 = 基準資産額

経過措置について

  • 施行日時点で届出により特定労働者派遣事業を営んでいる方
    平成30年9月29日まで、許可を得ることなく引き続き特定労働者派遣事業を営むことが可能
  • 施行日時点で許可を得て一般労働者派遣事業を営んでいる方
    現在の許可の有効期間内は、その許可のままで引き続き労働者派遣事業を営むことが可能
  • 施行日前に許可・更新の申請を行った方
    施行日前にした許可・更新の申請で、施行日時点でまだ決定がなされていないものは、改正後の法律に基づく申請として扱われるため、施行日後に改めて申請を行う必要はありません

但し、労働者派遣事業報告書は施行日前(2015年9月29日まで)に終了した事業年度については、従来の様式で報告書を提出することになり、それ以後は新しい様式の労働者派遣事業報告書を提出することになりますのでご注意ください。

 

3. 派遣元だけでなく派遣先も注意が必要

 今回の派遣法改正で派遣元事業主に対しては主に上述のような改正が行われましたが、派遣法改正の影響は派遣先にも及びます。

特に大きな影響を与えるものが「労働契約申込みみなし制度」が創設されたことです。

労働契約申込みみなし制度とは

労働契約申込みみなし制度とは、簡単に言うと違法派遣の状態で派遣されていることを知っていた、もしくは知り得た派遣先事業主は労働者に対して労働契約の申込みを行ったものとみなして、派遣労働者が労働契約に承諾すれば労働契約が成立したとみなされる制度です。

労働契約申込みみなし制度のポイントは以下の3つです。

  • 派遣先事業主が善意無過失か
  • 違法行為の類型に該当していないか
  • 申込みの内容となる労働条件

派遣先事業主が善意無過失か

善意無過失とは、その事実を知らないことに過失がないことを指しています。
この労働契約申込みみなし制度の中での「善意無過失」とは、派遣先の事業主が違法派遣の状態で派遣労働者を受け入れていることを知らないことに過失がない場合を指します。

また、この善意無過失の状態は派遣労働を行う日ごとに認識するとされているため、1日目は違法派遣の状態で受けれいていることに対して善意無過失であったとしても、2日目には無過失ではなくなるとされると定められています。

違法行為の類型に該当していないか

違法行為の類型として下記の4つが定められています。

  1. 派遣労働者を禁止業務に従事させること
  2. 無許可事業主または無届出事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること
  3. 期間制限に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること
  4. いわゆる偽装請負等(※4)

※4…労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、必要とされる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供をうけることとされており、一般的に派遣先事業主の意思も介在していると推定されます。

申込みの内容となる労働条件

労働契約申込みみなし制度では申込みの内容となる労働条件も定められています。

その内容は「違法行為の時点における派遣元事業主と当該派遣労働者との間の労働契約上の労働条件と同一の条件」とされており、派遣先事業主の他の従業員との待遇への乖離が生じる可能性が高いです。
但し、使用者が変わった場合にも承継されることが社会通念上相当であるものが申し込む「労働条件」の内容とされており、保養施設等の使用者によっては履行できない内容は「労働条件」の内容には含まないとされています。

 

4. まとめ

ニュース等では派遣労働者のことが取り上げられがちで、派遣元事業主や派遣先事業主にどのような影響があるかがわかりづらかったかもしれませんが、派遣元事業主や派遣先事業主に対しても大きな影響を与える改正の内容となっております。

派遣元事業主は、要件を満たすことが出来なければ事業の存続に大きく関わる内容となっており、派遣先事業主にとっても従業員の雇用と繋がる大事な改正の内容となっております。派遣元事業主だけでなく、派遣先の事業主の方も今回の改正の内容を確認していただき、事業運営にリスクが生じないように上手く派遣労働を活用していただけると幸いです。

 

今回の記事は株式会社Firststepの中谷が担当しました。

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スタッフ居村

この記事は会社設立代行会社の「FirstStep(ファーストステップ)」のスタッフが書いています。
FirstStepでは、起業される方のことを考え、どこよりもわかりやすく、起業や税務のアドバイスをおこなっている会社です。
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