今回の記事は,「元税務調査官が語る本当が恐い税務調査!」の続編として居村が担当させていただきます。

スペシャルゲストの元税務調査官で弊社税理士の前原に質問していきたいと思います!

元税務調査官 前原
25年間大阪国税局で勤務し、20年以上法人税と消費税の調査を行ってきた税務調査のスペシャリスト。
KDDIと中央会計のコラボサイト「経理通信」でも元調査官が語るという税務調査に関するコラムを執筆してるのでそちらもお読みいただけると税務調査について詳しく知ることが出来ます!

HPO_6690-1-920x1380

◆目次◆

  1. そもそも税務調査とは?
  2. 税務調査ってどこまで調べるの?
  3. 税務調査あるある
  4. 税務調査官にはノルマがあるの?
  5. 税務署の調査部門の組織

1 そもそも税務調査とは?居村アイコン

fs_i
「まず税務調査について、教えていただけますか?」

fs_m
「税務調査には、強制調査と任意調査があります。強制調査は国税局査察部(マルサ)が大口で悪質な脱税者に対して行う調査で、一般的に行う調査が任意調査です。なお、税務署の行う調査は任意調査です。」

fs_i
「税務調査の目的ってなんですか?」

 

fs_m「日本の所得税や法人税は申告納税制度を採用しており、税金を納税者自らが税務署等へ申告し、税額を確定させて納税する方式をとっています。これらの申告が正しく行われているかを調査するのが税務調査です。会社や個人事業者にとって税務調査を受けるのは宿命であり、調査する側(税務署)は性悪説を基本として実施しているのが実情です。」

fs_i
「性悪説が基本とは怖いですね!」

 

fs_m「イレギュラーな取引などは誤解される恐れもあるので、予め説明できるように準備しておく必要があります。」

 

2 税務調査ってどこまで調べるの?

居村アイコンfs_i
居村アイコン「では、税務調査ってどこまで調べるのですか?」

 

fs_m元税務調査官が語る本当は恐い税務調査」で説明しましたが、税務署は全国展開している国税庁という大組織の中の1支店であり、とんでもないほどの情報収集能力を持っていますので、税務調査対象の企業の取引情報について調査を実施する前段階である程度把握しています。
また、市町村と協力関係にありますので社長を含めた役員や主な従業員(経理担当等)の収入状況及び家族状況などの個人情報も把握しています。
調査官は、税務調査本番までに相当な情報を有しており、調査重要ポイントを絞って税務調査を実施します。」

fs_i
「実際に税務調査を行う場所ってどこなんですか?」

 

fs_m「税務調査は、帳簿及び書類が保管している事務所で行いますが、製造業であれば工場、小売業であれば店舗などの現場確認を行うとともに、従業員にも業務内容の聴き取りを行います。通常は、帳簿調査を中心に実施しますが、現況調査や現金監査なども行います。」

fs_i
「現況調査と現金監査とはなんですか?」

 

fs_m「現況調査とは、調査当日に社長及び経理担当者の机、金庫等の中を調べて原始記録の把握するのを目的とした調査です。最近では、パソコン(ゴミ箱も)もチェックします。
なお、現況調査は調査初日に行われるとは限らず、2日目に行われることもあります。
現金監査とは、調査当日の現金残高と現金出納帳の帳簿残高が一致するかを確認して、日常の現金管理状況が正しく行われているか否かを確認する調査です。」

fs_i
「ありがとうございます、よくわかりました。」

 

fs_m「その他に事実関係の確認が調査先のみでは困難な場合は、取引先や銀行に臨場して、確認調査を行う反面調査を実施します。
また、深度ある反面調査が必要な場合は、取引先の所轄税務署に依頼して、取引先への税務調査を実施してもらい事実関係の確認を行う連携調査を実施します。
ちなみに連携調査とは、同族会社のある会社の税務調査や取引関係の解明が困難とされる会社の調査について、関係会社とともに同時期もしくは直前直後に税務調査を行い、調査担当者同士で互いに調査情報を共有することによって、調査効率を高めて全容解明を行うことを目的とした調査です。」

fs_i
「税務署同士が連携するなんて何だか怖いですね!」

 

fs_m「反面調査や連携調査が行われた取引先には、時間も含めて迷惑をかけてしまうとともに信用問題に関わることもあります。
税務調査は担当調査官のみで行われるのではなく、全国展開している国税庁という大組織で行いますので、どんなに巧妙な手口を使っても脱税行為は必ずバレてしまいます。」

fs_i
「適正申告を心掛けるのが一番っていうことですね!」

 

3 税務調査あるある

fs_i
「税務調査の前に下見などを行うって聞いたことがあるのですが本当ですか?」

 

fs_m「内偵調査や外観調査を行うケースのことですね。」

 

fs_i

「内偵調査と外観調査っていうのは何をするんですか?」

 

fs_m「内偵調査とは、飲食店や小売店などの不特定の者に主に現金で販売する店に、税務調査を実施する前に調査官が客を装って行う調査です。主な確認項目としては、レジ管理がされている場合は、レジ打ちの有無、客数、客単価、従業員数などです。飲食店や小売店等の現金商売の場合は、帳簿調査のみでは売上計上の適正を確認するのが困難であるため、内偵調査での確認事項が重要となります。
外観調査とは、税務調査実施前に、社長の自宅や会社事務所等、土地保有の場合は土地の使用状況を、事前に確認する調査です。
税務調査の日数が限られているため、外観調査等により調査対象者に対する情報を事前に把握することが重要になってきます。」

fs_i
「税務調査を実施しなかった申告書というのはチェックしないのですか?」

 

fs_m「とんでもない!税務調査を実施されなかった申告書については、必ず調査官が署内にて申告書審査を行います。もし問題がある場合は後日、税務調査が実施されますよ。」

 

4 調査官にはノルマがあるの?

fs_i
「調査官にはノルマがあるのですか?」

 

fs_m「表立っての数字のノルマ、例えば追徴税額をどのぐらい稼がなくてはならないなどのノルマはありませんが、年間に税務調査を何件程度実施しなければいけないかというノルマはあります。
ただ先ほど、追徴税額等のノルマはないと言いましたが、確かにノルマ自体はありませんが、税務調査という仕事は具体的な数字が付きまといますので、部門間や同僚との間での競争意識が働き、数字を気にしている調査官が大部分だと思います。」

fs_i
「なんだか営業マンみたいですね。」

 

fs_m「わたしは申告是認(問題なし)が続くのが、凄く嫌でしたね。」

 

5 税務署の調査部門の組織

fs_i
「税務調査を行う税務署の調査部門の組織について教えていただけますか。」

 

fs_m「税務署の調査部門の組織及び職制について次の通りです。税務署の調査部門には民間会社のように課長、係長などの名称の役職はなく、独特な名称の役職があります。
なお、税務署で課長、係長などの役職がある部署は、税務調査を担当しない総務課のみです。」

職制について

◇ 統括国税調査官
税務署の課長級  調査先の選定、調査担当者の復命管理
※税務調査折衝の窓口責任者。年齢幅は40代前半~60歳前後

◇ 上席国税調査官
税務署の係長級  調査担当者で若手職員の指導にも当たる。
※困難調査事案を担当したりもする。年齢幅は35歳前後~60歳前後

◇ 国税調査官
税務署の主任級  調査担当者。
※年齢幅は20代後半~30代後半

◇ 事務官
税務署の一般職員  調査担当者
※年齢幅は20歳前後~30歳前後

◇ 特別国税調査官
税務署の副署長・課長級
※税務署所管(資本金1億円未満が大部分)の中で規模の大きい会社の調査を担当。年齢幅は40代後半~60歳前後

fs_i
「いろいろと参考になりました。ありがとうございました!!」