会社設立時に決めなければいけない登記事項についてこれまでも記事で書いてきましたが、今回もそのうちのひとつ「本店所在地」についてとりあげてみたいと思います。

本店所在地とは会社の住所にあたります。
本店所在地は、通常では事業活動を主に行う場所にすることが多いですが自宅にしても構いませんし、もちろん賃貸物件でも問題ありません。
自由にしていいとなると逆に迷ってしまうかもしれませんが、今回は本店所在地を決めるにあたっての注意点などを紹介したいと思います。

本店所在地

 CONTENTS

 ・自宅を本店にする場合の注意点

 ・会社設立前に賃貸オフィスなどと契約する場合

 ・助成金や制度融資と本店所在地について

 ・本店所在地TIPS

 

自宅を本店にする場合の注意点

最近ではWEBのフリーランスの方やネット小売業の方などをはじめとして、賃貸オフィスを借りなくても自宅で仕事ができる手段が増えてきたことから本店所在地を自宅にする方も増えてきているように思います。
自宅を本店所在地とすることは問題ありませんが、その物件が賃貸物件の場合には、そこを本店とすることに対して大家さんの承諾をとっておくことが望ましいです。
契約書などに「事務所等には使用しないこと」というような記載があったりするので、勝手に会社の事業所として使用すると後々契約違反などということで面倒なことになってしまうおそれがあります。
マンションなどの集合住宅の場合は管理組合の規約などもチェックしておいたほうがよいです。

また、許認可を取得されることを考えられている方もきちんと事前に許認可の要件などは調べておいてください。
例えば、中古物品の買取などを行うのに必要な古物商の許可申請についてですが、これは管轄の警察署の防犯係が窓口となるのですが、必要書類に営業所の賃貸借契約書のコピーが必要となります。
警視庁の古物の許可申請のページに以下のような注意書きがあります。

※分譲、賃貸に限らず、マンションや集合住宅など、使用目的が「居住専用」となっている場所や「営業活動を禁止する」となっている場所は、そのままでは営業所として申請を受理できません。
その場合は所有者や管理会社・組合から「当該場所を古物営業の営業所として使用することを承諾する」旨の内容の書面を作成してもらって添付する必要があります。

ということがあるので許認可によっては注意してください。

 

会社設立前に賃貸オフィスなどと契約する場合

賃貸契約のオフィスビルなどを本店としたい方は多いです。
この時によく質問されるのが契約の名義は設立予定法人でしたらいいのか、個人名義でしたらいいのかということがあります。
会社設立前ということで、まだ会社自体が存在しないので会社名義で契約することができません。
この場合の方法としてはいくつかあります。

・個人名義で契約しておき、契約の際に会社の本店に使用する旨を伝え、設立後に会社名義の契約に変更する。
※名義を書き換えることになるので名義変更料などを請求される場合があります。

・これから設立する会社名で仮契約を行い、登記完了後に会社名義での本契約を行う。
※この方法が一番費用も手間もかからない方法ではないかと思います。

 

助成金や制度融資と本店所在地について

助成金や融資と本店所在地に関係があるってご存知ですか?
これから会社をつくって起業される方の中には融資や助成金をうけることを考えられている方もいると思います。
起業の際によく使う融資のひとつに日本政策金融公庫の「新創業融資制度」などがございます。
こういう融資は全国対応ですので、どこの地域で融資を受けても条件は同じです。

上記のような融資の場合は問題ないのですが、都道府県などの地方公共団体が独自に行っている保証協会の保証付きの制度融資を受けようとする場合には注意が必要です。
このような制度融資はその主体が都道府県や市町村であったりするので、原則的にその地域に本店を持つ会社しかその制度融資を受けることができません。
また、融資の要件もそれぞれ違いますし、とりあえず本店は自宅にしておこうかな、という風に適当に決めてしまうと実は隣の市区町村のほうが有利な制度を行っていた、なんてことになります。

助成金も同様に全国同一対応のものから各都道府県や市区町村が独自で行っているものがあり、本店の要件がはいってる場合が多いですので事前にチェックしておいたほうがいいですね。

 

本店所在地TIPS

・本店が集合ビルやマンション内などにある場合の登記住所はマンション名以降は省略可

会社の登記する本店所在地については番地(〇丁目〇番〇号)まで定めておけば大丈夫です。
例えば、東京都港区新橋2丁目3-5(×××マンション〇〇号室)を本店所在地にする場合、この()内の部分は登記するしないは自由に決めて大丈夫です。
登記では省略しても名刺やWEBサイトにはマンション名やビル名まで載せておいた方が取引相手などにはわかりやすいと思いますね。

・会社の本店を移転する場合の登記費用について

本店を移転する場合の登記費用についてですが法務局管轄内と管轄外で変わってきます。

同一の法務局管轄内に移転する場合・・・登録免許税3万円
法務局管轄外に移転する場合・・・登録免許税6万円

管轄外へ移転する場合には新しい管轄法務局と旧管轄法務局の分で倍の金額がかかってしまいます。

・レンタルオフィスやバーチャルオフィスを利用する場合の注意点

レンタルオフィスやバーチャルオフィスでも会社登記の住所に使用できるところは多くあります。
これらを利用することで初期投資を抑えることができたりもしますが少し注意点があります。
ひとつめは従業員を雇うと必ず加入義務が発生する労災保険の加入についてです。
労災保険に新規加入する際の住所ですが、実際に労働者がいる住所で加入することになります。
バーチャルオフィスなどは実際にはそこで労働者が働いてるわけではないのでそこがネックとなり加入できないケースもあります。
ふたつめには会社を設立したら会社名義の銀行口座を開設しますが、都市銀行などでは開設を断られるケースもあるので注意が必要です。

 

今回は本店所在地についてFirstStepのがこの記事を担当させていただきました。
会社設立にあたっては他にも決めなければいけない登記事項がございます。
下記の記事も参考にしていただければと思います。

商号(会社名)について
資本金について
事業年度について
事業目的について
取締役の任期について