4-1 月次決算処理のポイント
4-2 月次決算処理の確認
4-3 貸借対照表残高の確認
4-4 損益計算書科目チェック
4-5 営業外収益・費用のチェック
1 貸借対照表科目
貸借対照表の資産項目に掲げている金額については、残高の確認、評価の妥当性、資産の実在性、負債の網羅性が重要な検証事項となる。


2 流動資産
@ 現金
現金については実際の有り高と帳簿残高が一致しているか確認します。現金を一部小口化している場合は、小口ごとに実際有り高を勘定し、帳簿も小口ごとに管理し残高の確認を行う。
現金 取引の発生、預金振替、支払事実につき証憑書類の日付と照合して検証する。
小口現金 定額資金前渡法により管理し頻度が多く少額の営業経費のみの処理であるか検証する。

A 普通預金
預金については、預金種類別、取引銀行別、口座別に預金通帳の残高と、帳簿残高が一致しているか確認します。
当座預金 当座勘定照合表の残高と帳簿残高が一致する当座預金残高調整表を作成する。
定期預金 満期管理を行う

B 医業未収金
病医院事業活動に基づき、短期間に発生する保険請求額の未収金残高を計上します。支払い基金からの入金は、通常、診療月の2ヵ月後になりますので、2ヵ月分の請求金額が計上されております。
入金時において、請求金額と入金額に差異が生じます。原因は、レセプト返戻分と保険査定減によるものが大半です。この分を調整する必要があります。
支払基金等からの入金額から天引きする支払勘定が発生する場合があります。この場合は、引去り明細を確認して経理処理し、未収金残高を一致させます。

C 棚卸資産
棚卸を行うことによって金額が確定します。棚卸方法は、継続記録法と棚卸計算法があります。毒物、劇物の医薬品の管理は薬事法によって継続記録法が義務付けされています。その他の医薬品は棚卸計算法により管理する。
医薬品 投薬、注射薬、外用薬、検査用試薬、造影薬などの医薬品の実地有高を確認します。
診療材料 カテーテル、縫合糸、医療酸素、レントゲンフイルム、歯科材料等の実施有高を確認します。
給食用材料 患者給食及び従業員等給食のために使用される食材のうち未使用残高を確認します。
貯蔵品 医療消耗器具備品、その他の消耗品及び消耗器具備品で固定資産の計上基準額に満たないものの未使用残高を確認します。

D 短期貸付金
金銭消費契約等に基づき開設主体の外部に対する貸付取引のうち当初の契約において1年以内に受取期限の到来するものの残高を確認します。
受取期限が1年を超えて到来するものは、固定資産の長期貸付金で処理し、受取期限が1年以内になった場合は短期貸付金に振替処理を行います。


3 固定資産
@ 有形固定資産
開設主体がその事業活動のように供するために長期に渡って使用する資産を確認します。月次においては、当月取得資産が事業の要に供されたか確認し、取得価格を明確にする必要があります。取得価格には、当該資産の購入代金、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他当該資産の購入のために要した費用及び当該資産を事業のように供するために直接要した費用の額を求めます。
建物 診療棟、病棟、管理棟の病院本来の目的建築物
構築物 門、塀、舗装道路、緑化施設等の工作物
医療用器械
備品
治療、検査、看護など医療用の器械

A 無形固定資産
ソフトウェア、借地権、電話加入権、営業権、その他の無形固定資産に該当するものの残高を確認します。

B 投資有価証券
国際、地方債、株式、社債、証券投資信託の受益証券などのうち満期保有目的の債権、その他有価証券及び市場価格の無い有価証券などの残高を確認します。

C 長期前払費用
時の経過に依存する継続的な役務の享受取引に対する前払分で1年を超えて費用化される未経過分の金額の残高を確認します。


4 流動負債、固定負債

@ 買掛金
医薬品、診療材料、給食材料など棚卸資産に対する未払債務の残高を確認します。これらの購入は特定の仕入業者より締め日毎に請求書が送付されるため、請求内容にしたがって残高を確認していきます。実務的には、仕入先別に補助簿を作成し、残高管理することは必要となります。
医薬品費 診療のために使用される医薬品で納品書、請求書チェックを行い補助簿の作成、管理を行う。
診療材料 診療材料の納品書、請求書チェックを行い補助簿の作成、管理を行う。

A 未払金
通常の取引において、主に発生原因が医業費用あるいは器械、備品等の購入及び支払であるものの残高を確認します。未払金は、その取引先が買掛金以上に多数となるため、期中においては買掛金と同様に補助簿を作成する必要があります。償却資産でない土地、借地権取得の未払額、税金等の確定額なども管理します。

B 短期借入金
公庫、事業団、金融機関などの外部からの借入金で、借入金とは、外部から金銭を受入、当初約定の期日到来日に返済する契約です。当初の契約において1年以内に返済期限が到来するものの残高を確認します。
証書借入 金銭消費契約証書を作成する証書借入
手形借入 返済日を決済日とした手形を振り出す手形借入
当座借越 当座預金の不足額を契約枠の範囲内で補填する当座借越し

C 未払費用
賃金、支払利息、賃借料など時の経過に依存する継続的な役務給付取引において既に役務の給付は受けたが、法的にその対価の支払債務が確定していない分の金額の残高を確認します。

D 預り金
入院預り金など従業員以外のものからの一時的な預かり金の残高を確認します。入院患者の実在者と帳簿金額及び名簿を定期的にチェックして、その残高を確認していきます。


5 固定負債
@ 長期借入金
公庫、事業団、金融機関などの外部からの借入金で、当初の契約において1年を越えて返済期限が到来するものの残高を確認します。借入先ごとに期首残高、当月増加額、当月減少額を記載して残高管理していきます。

A その他の固定資産
前掲の科目に属さない債務等であって、期間が1年を超えるもので金額の大きくないものについて残高を確認します。長期預り金、長期支払手形、税効果会計の適用時において発生する繰延税金負債などを管理します。
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